水を飲むときに井戸を掘ってくれた人の気持ちを忘れない
当店ではお箸をより長く
大切にお使いいただけるように
拭き漆の塗り直し
を承っております
店頭や郵便等でお客様より
いろいろなお箸が送られてまいります
送っていただいたお箸によっては
木地の確保が難しいなどの理由で
現在は販売していないお箸もございます
送られてくるお箸には
お客様の「大切な想い」が
込められているわけですが
商品や販売時期などによっては
販売したお店の店員や職人の
「想い出」があり、走馬灯のように
いろいろなシーンが
よみがえってくることがございます
そんな一場面
お店に「拭き漆の塗り直し」希望の
お客様がお見えになりお箸をお預かりしました
私がお預かりしたお箸を見てみると
かなり使い込まれていて
漆のほとんどが剥がれてしまい
木地が表れてしまっている感じでした
同じお箸は私が見渡せる店内には
見つからなかったので
知識の浅い私では
何の木地かもわかりませんでした(>_<)
でもとりあえず、シゲさんのいる
「工房」へ持っていきました
私:拭き漆の塗り直しをお願いします
シゲさん:ハイよ、、そのお箸、店頭?
私:はい、お客様からお預かりしたんですけど
このお箸、木地なんですか?(@_@
シゲさん:おぉ どれどれ
(手に取りながらじっくりと見て)
これはオノオレの削り箸だよ
私:え?(@_@;)、でも今、
店舗にあるオノオレとチョット
削りが違うような気がしますが・・(^_^;)
シゲさん:このオノオレはね7年位前
(開店間もないころ)
ある職人さんに作ってもらったお箸で
結構、人気があったんだけどね
一時期、オノオレの木地がなくなってしまって・・・
今はまたオノオレの木地が入手できたので
オレが製作して復活させ店頭に並んでいるけどね」
(シゲさんはとても懐かしそうにそして愛おしそうに
お客様からお預かりしたお箸を見ています)
私:じゃ、よろしくお願いします。
お箸をシゲさんに預け、私はお店に戻りました
閉店間際、その日の作業に一区切りつけたシゲさんが
工房からお店に来て語りだしました。
そして私が先ほどのお箸を持って行った時に感じた
「懐かしさ」と「愛おしさ」の理由が
初めてわかりました
「あのお箸を見ていたら当時(7年前くらい)の事が
いろいろよみがえってきてね。。
家庭のこととか・・仕事のこととかで
個人的に悩んでいてね
当時を振り返ると色々つらかった
それに比べれば今は幸せなんだなぁと
今の自分に言い聞かせているような
気持ちになったんだよ
それにしてもこのお箸を、
ここまでお使いになってくれたお客様に対して、
大袈裟ではなく、感動すると同時に
「本当に有難うございます」
と言わせて頂きたい気持ちだね
モノを大切にする心と
温故知新ではないけれど、今までの環境が
今の自分やこれからの自分を支える礎になっていることを
再認識させて頂きました
また、いつかこのお箸の拭き漆の塗り直しを
やらせて頂ければ幸せだよね。」
お店にいるスタッフの誰もがみんな
シゲさんの想いを受け止め
お客様への感謝の気持ちを持った瞬間でした。