しなやかな心遣い
お箸やさんになるまでは
あまり意識していなかった
・・というより
知らなかったものの一つに
「のし」の種類や「表書き」があります。
「蝶結び」や「結び切り」の違いなどは
勿論、知っていましたが、
表書きはこんなにも
古くからの日本人のつつましやかで
素敵な表現がたくさんあるとは
思ってもみませんでした
と同時に知らなかった自分が
恥ずかしいというよりも
どことなく日本人として
「損をしていた」ような
不思議な感覚でした
その代表格の言葉が
「松の葉」
小さくて細い松の葉で包めるくらい
僅かですということから
「ほんの気持ちです」という
意味合いで使い
ちょっとしたお礼や
手土産を持参するときに使います
また「松の葉」は葉が落ちたときも
「ふたつでひとつ」というその姿から
生涯ずっと寄り添う夫婦にたとえた
縁起物としての意味もあり、
新潟県の一部などでは結婚式の
引出物の一つとしても使われています。
私の場合にはお客様に対して
お客様が、「ちょっとした御礼」とか
「あまりかしこまってあげたくない」など
どんな表書きか悩まれているときに
「松の葉」をおすすめしています
受け取られた方が仮に
「松の葉」の意味をご存知でなくても
その言葉の持つやわらかさと
贈り主(差出人様)の一歩下がった
しなやかな心遣いは、
きっと伝わり、受け取られた方が
気になってインターネットや
国語辞典で調べる方も多いと思います
そして意味がわかったら
きっと贈り主の人柄を
思い浮かべることでしょう
正式には目上の方へ贈られるときが
「松の葉」
同僚の方や目下の方へは
「まつのは」
または
これも綺麗な響きで
気に入ってしまったのですが
「花一重」
があります
「花びら一枚ほどのわずかな気持ちですが」
という謙虚な気持ちを表した表現で、
傍若無人な私には
「無縁」な気もしますが
お箸やさんになったことで
こんな素敵な言葉の意味を
知っただけでも
なんだかうれしく思います
私だけかもしれませんが
悲しいとき
寂しいとき
少し気持ちが落ち着かないとき
いくつもの素敵な言葉よりも
たったひと言の思いやりが
心をやさしくまあるくしてくれます。
のし紙の表書きひとつでも
直接言葉は交わさないけれど
同じような役割をしてくれるような気がします
お客様からお客様へ
お箸をただ販売しているのではなく
ほんの少しでも
お客様同士の心をつなぎ
「メッセンジャー」の役割が出来たら
それだけで
この仕事をしていて
幸せだと思えます(^_^)